メールやビジネスでの挨拶のように日常的でありながら、疑問が残ったり、マナーを問われたりするものもあれば、退職や引越し、結婚式に新郎や新婦、あるいは友人として出席する際に求められるスピーチといった特別な場面で必要になるものまで、あいさつに困ったら例文を参照すると便利です。
自分の頭で考えて四苦八苦している方がいますが、シチュエーションによって定型的な言い回しや押さえておかなくてはならないポイントが決まっているものもあるため、例文の活用が求められるのです。たとえば、時候の挨拶は特定の言葉遣いが決まっているため、自分の好きなようにアレンジするものではないのと同様に、それぞれのシーンによってある程度の型があるものです。
挨拶を例文で済ませるというと味気なく、手抜きのように感じる方もいるでしょうが、決まった形をベースにすることはマナーを守るために大切で、相手への気遣いでもあります。もちろん、そのうえで自分の言葉を使って思いを伝えるのは問題ありません。
メールの挨拶
ビジネスやプライベートですっかり普及したメールですが、比較的新しいものであることや、利用法が変化してきた経緯もあり、いまだにマナーや挨拶に曖昧な部分が残る部分はあるものの、ある程度決まった形はできてきました。
まずはシチュエーションを分けて、ビジネスでメールを使用する場合から考えてみましょう。簡潔に用件をまとめれば相手が読む時間を減らすことにつながりますので、基本は簡略化する方針でいきましょう。取引先であれば、「いつもお世話になっています。」といった挨拶が一般的です。ただし、長期間に渡って連絡を取っていなかった場合には、もう少し言葉を付け加えてもよいでしょう。
会社の内部であれば、挨拶として「お疲れ様です。」の一言を添える例もあれば、それも省略して徹底的に合理化を図る社風の企業もある反面、上司に対しては社外にメールを出す場合以上に気遣いを求められるケースもあります。会社の雰囲気や慣習を参考にしておくと間違いないでしょう。
友人同士でメールをする場合には、特に若い世代ほどかしこまった挨拶をしないで本題に入るのが一般的ですが、相手が送ってくるメールの文面を参考にすると、温度差ができなくてよいでしょう。当然、ビジネスで使うメールに比べると砕けた表現でかまいません。
ビジネスで使う挨拶
プライベートなら笑って済まされる失敗も、ビジネスの場面では致命的なミスになってしまうケースがあります。大事な場面での一言が後々まで響くこともあるため、特に多くの人の注目が集まる場では言動に気をつける必要があります。
出勤や仕事を終えて帰る際の挨拶やメールの文面のように日常的なものから、忘年会や新年会のように会社のイベントでの乾杯の音頭、さらに異動や退職といった転機を迎える場面でお世話になった人に感謝を伝えるものまで、様々なシチュエーションがあり、社内外での人間関係や仕事の評価にもつながりますので、しっかりポイントを押さえておきましょう。
忘年会や新年会の乾杯の挨拶の場合、年代や役職によって求められる内容が異なります。出席している中で上役や年長者に当たる人なら周囲を鼓舞したり、労をねぎらう役割を、新入社員や若手なら元気の良さや場を盛り上げられる役目を担うのが一般的です。
近年はビジネス本と呼ばれる書籍がブームを過ぎて定着した感があるうえ、スキルアップも以前に比べて一般的になりました。しかしながら、直接的に仕事と関係のないマナーで上司や上層部の心証を悪くしている例もあり、基本的な常識がないと疑われるために大きな仕事を任せられないと判断されることもあるのです。
反対に言えば、会社の中や仕事関係者が集う忘年会等での挨拶をしっかり行っておけば、それだけ次のステップへの道になる可能性もあると言えます。
イベントでのあいさつ
結婚式での友人代表のスピーチやお通夜・告別式・一周忌などの法事での喪主の挨拶、引越しの際の近所周りのように、イベントに伴って行うあいさつがあります。定期的に行うわけではありませんし、人生を通算しても片手で数えられる程度の回数しか経験しない方も少なくないと思いますので、例文を使えば助かります。
お通夜や法事の場合には厳粛な雰囲気であるために失敗できず、さらに言い回しが独特であるため、間違いのないように例文をベースにして用意しておいたほうがよいでしょう。もちろん、故人の名前を変えたり、時候の部分を季節に合わせるのを忘れないでください。
これに対し、結婚式で友人代表として挨拶をする場合には例文をそのまま写しても使えないので、オリジナルのエピソードが必須です。ただし、基本的な構成や押さえるべきポイントは限られているため、最初から自分で考え始めるよりも、それぞれの箇所に当てはめる形で作っていったほうが、スピーチとして質の高いものになります。
引越しの時に行う挨拶としては、近所に対するものと、お世話になった人への報告を兼ねて行う連絡があります。手紙を出して報告する場合には季節に合わせた時候の言い回しに注意する必要はあるものの、難しいものではありません。
挨拶・スピーチの仕方
人前で話すのが苦手な方にとって、多くの方の注目を集めるスピーチは嫌なものです。しかし、どうしても避けられない場面もあり、望むかどうかに関わらず葬儀で喪主を務めなくてはならなくなったり、退職や異動に伴って同僚の前で挨拶をしなくてはならなくなるケースもあります。
このような時に上手にスピーチをするためのコツを押さえておきましょう。まずは事前に内容をしっかり決めておき、話の要点を理解しておくことです。話すのが苦手なら、あらかじめ原稿を作ったり、簡単な流れを確認しておきましょう。本番では一字一句間違えないように読む必要はないので、多少間違えてもかまいません。外してはいけないポイントだけ押さえておきましょう。
緊張のあまり早口になってしまうと展開についていくのが大変になり、ますます自分を追い込んでしまうので、意図的にゆっくり話すようにしましょう。スピーチを聞く側は耳だけで情報を集めているので、スピードが遅いほうが理解しやすいのです。
また、内容は同じでも大きな声を出すだけで説得力がますものなので、良いスピーチに聞こえます。ゆっくり大きな声で話を進めれば、それだけで挨拶の仕方としてはかなりの部分が成功と言ってもよいでしょう。
文例を参考にしてせっかく良いスピーチの内容を考えても、本番で力を発揮できなければ意味がありません。過去に成功体験があるのなら、それをイメージするとリラックスできます。
ネットの普及で例文は身近に
かつてもマナー本などを見ると色々な場面にふさわしいスピーチの例文が載っていました。葬儀や四十九日、一周忌、三回忌などの法事や結婚式、退職や転勤の挨拶といった代表的なものについては網羅されていました。
しかし、人生において挨拶の文例が必要な場面には色々なものがあり、すべてを1冊の本でカバーするのは現実的ではありません。たとえば、PTAの会長が卒業した際に一言を求められた場合の例文や、町長や自治会長といった特殊なポジションに就いている人に向けての例まで事細かに集めるのは厳しいでしょう。
しかし、インターネットが普及したことによって、代表的な場面での挨拶の例文ばかりではなく、遭遇する頻度が高くないシチュエーションについても触れているサイトを見つけられることがあります。
例文をまとめているホームページばかりではなく、「教えてgoo」や「OK Wave」のようなQ&Aサイトに回答が掲載されているケースもありますし、自分で質問して答えを求める手段もあります。そう考えると、本当に便利になったものです。
現在では、よほど特殊な事例でなければ例文を見つけられるようになっていますので、行き詰ったらネットで検索してみるとよいでしょう。世の中には同じようなシチュエーションがあふれているわけなので、自分がこれから直面する場面に近い経験を他の人がしている可能性が高いのです。その時の記録を残している方がいるかもしれないため、調べてみる価値があります。
あいさつへの返事
口頭ならともかく、メールや手紙で丁寧な挨拶が届いた時には、原則として返事をしなければなりません。ただし、冠婚葬祭によっては返事を出さないのがマナーとされている例もありますので、どのような儀礼様式になっているか、例文と共に確認しておくと安心です。
原則として、メールでくるものについては、返事についてもあまり形式的なマナーは厳しくありませんので、相手に失礼にならないように書いて迅速に返信するとよいでしょう。
これに対し、手紙で届けられるものについては返事を出すべきかどうか、そして内容をどのようなものにするか慎重になったほうがよいでしょう。特に冠婚葬祭に関わる場合には例文の確認をして返事をしておくことをお勧めします。
相手から丁寧に挨拶が届いたのに、返事によって関係を台無しにしてしまうケースもあります。返事だけなら簡単に済ませられると考えらがちですので気をつけてください。